友だちと囲む韓国料理、ちょっと辛いのがまたいい。ワイワイガヤガヤ笑える食卓のつくり方

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秋の夜長というのは、不思議と人を集めたがる。十月の終わり、午後六時を過ぎたあたりから空気がきゅっと冷えてきて、誰かの家のリビングに灯りがともると、なんとなく「今日、集まろう」という気持ちになる。そういう夜に、韓国料理はよく似合う。

先週の土曜日のことだ。友人のミナが「うちでサムギョプサルやろう」と声をかけてきた。集まったのは四人。みんなで食材を買い込んで、夜七時ごろにミナの部屋に転がり込んだ。玄関を開けた瞬間から、ごま油とにんにくの香りがふわりと漂ってきた。その匂いだけで、もうお腹が鳴った。

韓国では、厚みのある熟成厚切りサムギョプサルや骨付きサムギョプサルなど、お店ごとにおすすめの看板メニューが異なり、たっぷり出てくる野菜に包んだり、焼いたキムチと一緒に食べたりと、アレンジが豊富なのも本場ならでは。
そのスタイルを、私たちはミナの家の卓上コンロで再現しようとしていた。うまくいくかどうか、正直わからなかったけれど。

肉をのせた瞬間、ジューッという音が部屋に響いた。その音が合図になったみたいに、四人の会話が一気に弾みはじめた。ワイワイガヤガヤ、誰かが笑い、誰かがキムチを皿に盛り、誰かがタレを混ぜる。それぞれが好き勝手に動いているのに、なぜかちゃんと食卓が出来上がっていく。韓国料理を囲む時間というのは、いつもそういう感じだ。

ちょっと辛いキムチを一口かじったとき、目の奥がじんわり熱くなった。子どもの頃、初めてキムチを食べたとき「これ、食べ物じゃない」と思ったのを今でも覚えている。あの頃は辛さが怖くて、口に入れるたびに牛乳を飲んでいた。それがいつのまにか、辛みを「おいしい」と感じるようになっていた。人の舌というのは、ちゃんと育つものらしい。

2025年から2026年にかけてのグルメトレンドキーワードは「ヘルシー&レトロ」で、かつては庶民の味方だったサムギョプサルも、熟成技術やブランド豚にこだわる高級店が増え、ワインと共に楽しむスタイルが定着しつつある。
そんなトレンドとはまったく無縁に、私たちは百円均一のトングで肉をひっくり返していた。それはそれで、なんだかよかった。

テーブルの上には、サムギョプサルのほかにトッポッキも並んでいた。
トッポッキはチーズ・クリーム・ロゼと、進化系が止まらない人気メニュー。
ミナが選んだのはロゼ味で、ちょっと辛いのにクリーミーで、甘さと辛さが絶妙に絡み合っていた。「これ、やばい」と誰かが言って、全員がうなずいた。言葉にならない共感というのは、おいしいものを食べているときにしか生まれない気がする。

2026年、東京・大阪の韓国料理激戦区では、カルグクス専門店のオープンラッシュが続いており、一人でも入りやすい価格帯と雰囲気でランチ需要を取り込んでいる。
そういう話をしながら、友人のリカが「最近、新大久保のカルグクス食べた?」と聞いてきた。まだ食べていない、と答えたら「じゃあ次はそこ行こう」と即決された。韓国料理の話題は、次の約束を自然に生む。

食事も終盤にさしかかったころ、ミナがコンロの火を弱めながら、ふと遠い目をした。「あ、肉、焦げてた」。誰も気づいていなかった。全員で覗き込むと、端っこの一枚がしっかり炭になっていた。「これはこれでおいしいかもしれない」とリカが言い、みんなで笑った。その笑いが、夜の空気をほんの少し柔らかくした。

コンロの熱がじんわりと手に伝わってくる。外はもう冷えているはずなのに、テーブルの周りだけは温かかった。ミナがソウル雑貨店「ハナモリ」で買ってきたというマッコリカップを並べて、乾杯をした。陶器の感触が指先に心地よく、中身はほんのり甘くて、喉を通るときにやさしい酸味が残った。

次々と新しいヒットが生まれる韓国グルメは、SNSやママ友などの間でも「これ知ってる?」と盛り上がるほど話題が尽きない。
でも、そういうトレンドの話をしながらも、私たちが本当に楽しんでいるのは料理そのものより、この食卓を囲んでいる時間なのだと思う。ちょっと辛くて、ちょっとうるさくて、ちょっと焦げていても、それでいい。

韓国料理には、人を集める力がある。ワイワイガヤガヤと笑い合いながら、誰かの家の小さなテーブルを囲む。それだけで、十月の夜はちゃんと完成する。次の約束は、もう決まっていた。

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