
冷蔵庫を開けて、途方に暮れた。
友達が6人も来るって聞いたのが3日前で、そのときは「なんとかなるでしょ」って思ってたんだけど、当日の午前中になって急に焦りはじめる自分がいる。料理なんて普段から作ってるし大丈夫だろうと思ってたのに、いざ「パーティ」って言葉がちらつくと、なんだか急にハードルが上がって見えてくるから不思議だ。一人で食べる夕飯なら冷凍パスタでも全然平気なのに、人が集まるとなると途端に「ちゃんとしなきゃ」みたいな謎のプレッシャーが襲ってくる。
結局、イタリアンっぽいものにしようと決めたのは、なんとなくオシャレに見えるし失敗しても「まあイタリアンだし」って言い訳できそうだったから。トマトソースのパスタと、あとサラダと、それからピザでも焼いてみようかなって考えた。ピザ生地は前日に仕込んで冷蔵庫で寝かせておけば楽だし、トッピングは各自好きにやってもらえばいいかなと。自分で全部やろうとすると絶対パンクする。
昔、大学時代に友達の家でやったパーティで、ホストの子が朝から張り切ってローストビーフとか作ってたんだけど、結局みんなが到着する頃にはヘトヘトで、パーティどころじゃなくなってたことがあった。あれ見てから、「頑張りすぎない」っていうのが自分の中でのルールになってる。
当日の昼過ぎ、近所のスーパーに買い出しに行ったら、やたらと家族連れが多くて、なんだか妙に賑やかだった。週末だからかな。カゴにトマト缶とモッツァレラチーズとバジルを放り込みながら、ふと「あ、オリーブオイルって切れてたっけ」と思い出して、また売り場を戻る。こういう時に限って忘れ物が多い。レジに並んでるときに、隣のおばさんが持ってるカゴの中身がやたら豪華で、ちょっと焦った。ローストチキンの丸ごととか、見たことないようなチーズとか入ってて、「うちもあれくらい本気出すべきだったかな…」とか一瞬思ったけど、まあいいか。
家に帰ってから、とりあえずトマトソースを仕込みはじめた。ニンニクをオリーブオイルで炒めて、トマト缶をドバッと入れて、塩とバジルで味を整える。この匂いがキッチンに広がる瞬間が好きで、なんていうか「料理してる感」が一気に出る。窓を開けてたら、外から子どもの声が聞こえてきて、どこかの家でもパーティでもやってるのかなって思った。午後の光が斜めに差し込んできて、キッチンが妙にあたたかい。
ピザ生地を伸ばしながら、ふと「これ、ちゃんと膨らむかな」って不安になる。発酵が足りてないかもしれない。まあ、最悪ペラペラのピザになっても、それはそれで「クリスピー系です」って言い張ればいいか。トッピングはシンプルにトマトソースとチーズとバジル、あとサラミも乗せてみる。もう一枚はマルゲリータ風に。冷蔵庫の奥から見つけた賞味期限ギリギリのアンチョビも刻んで散らしてみた。
友達が来たのは夕方6時過ぎで、みんな手土産に飲み物とかお菓子とか持ってきてくれて、テーブルがあっという間にいっぱいになった。「料理すごいね!」って言われたけど、正直そんな大したことはしてない。ピザをオーブンに入れて、パスタを茹でて、サラダを盛り付けただけ。ピザが焼けるときの香ばしい匂いが部屋中に広がって、みんなで「いい匂い〜」とか言いながらワイン開けて、気づいたらもう普通に盛り上がってた。
料理って、別に完璧じゃなくてもいいんだなって思う。むしろ、ちょっと失敗してたり、適当なところがあったりするほうが、みんなで笑いながら食べられて楽しかったりする。誰かが「このピザ、端っこ焦げてない?」って言ったときも、「それが味だから」って返したら、みんな笑ってた。
結局、一番盛り上がったのはピザを自分たちで追加トッピングしはじめたときで、冷蔵庫にあったものを適当に乗せて焼いてみたら、意外とどれも美味しくて。誰かが持ってきたチーズをこれでもかってくらい乗せたピザは、もはや原型をとどめてなかったけど、それが一番人気だった。
片付けながら、「また来月もやろうよ」って誰かが言って、みんな「いいね」って返してた。次は誰の家でやるかとか、何料理にするかとか、そんな話をしながら夜は更けていく。
別に、特別なことは何もしてない。ただ、人が集まって、一緒に食べて、笑って、それだけ。

コメント