
金曜の夜、久しぶりに集まろうってなって、誰かが「韓国料理どう?」って言い出した。
その瞬間、グループLINEが一気に盛り上がるのが面白い。普段は既読スルーばっかりの奴らが、突然「チーズタッカルビ食べたい」「スンドゥブ!」「いや今日はサムギョプサルでしょ」って、急に饒舌になる。結局、新大久保の「ハンアリ食堂」っていう店に決まったんだけど、予約の電話をかけたのは私。いつもそう。
で、実際に店に着いてみると、もうその時点で空気が違うんだよね。赤い看板、店内から聞こえるジュージューって音、ごま油とニンニクの匂いが混ざった独特の空気。テーブルに案内されて座った瞬間、なんていうか、スイッチが入る感じ。
最初に運ばれてくるキムチとナムルの小皿たち。これを箸でつつきながら、みんなでメニューを眺めるあの時間が妙に好きだったりする。「これ辛いかな」「前食べたけど大丈夫だったよ」「いや、お前の辛い基準おかしいから」みたいな会話が自然と始まって、まだ何も頼んでないのにテンションが上がってくる。
注文したのはチゲ鍋とチヂミ、それからヤンニョムチキン。私は辛いの得意じゃないんだけど、こういう場だとなぜか「ちょっと辛いくらい大丈夫」って強がってしまう。で、案の定、最初の一口で「あ、これ無理なやつだ」って気づくんだけど、もう後には引けない。
鍋がグツグツ煮えてきて、湯気が立ち上る。その湯気越しに見える友達の顔が、なんか普段と違って見えるのが不思議。会社では真面目な顔してる奴が、豆腐をフーフーしながら「熱っ、熱っ」って言ってたり。いつもクールぶってる子が、チーズを伸ばして「見て見て!」ってはしゃいでたり。
そういえば去年の夏、一人で韓国旅行に行ったことがあって。ソウルの市場で食べた屋台のトッポギが忘れられなくて、帰国後に自分で作ってみたんだけど、全然違う味になった。コチュジャンの量を間違えたのか、ただ甘辛いだけの何かになってしまって、一口食べて捨てた。料理って、やっぱり雰囲気とか、誰と食べるかで味が変わるんだと思う。
テーブルの真ん中で赤く煮立つ鍋を、みんなで囲んでつつく。取り皿に移した具材から立ち上る湯気。誰かが「辛っ!」って言いながら水を飲んで、別の誰かが「だから言ったじゃん」って笑う。そのやりとりを見ながら、私も辛さに耐えつつ箸を動かし続ける。汗が額に滲んでくるのに、なぜか箸が止まらない。
ヤンニョムチキンが運ばれてきたときは、もうテーブルの上がカオスだった。鍋の具材、チヂミの切れ端、空になった小皿、誰のだか分からないグラス。店員さんが「お皿お下げしますね」って言ってくれたけど、どれを下げていいのか私たちにも分からない状態。
面白いのは、韓国料理を食べてるときって、みんなやたらと喋るってこと。普段は聞き役に回りがちな子まで、何か話し始める。辛さでハイになってるのか、それとも鍋を囲む距離感がそうさせるのか。話題はあっちこっちに飛んで、仕事の愚痴から昔の恋愛話、最近見たドラマの話まで。
気づいたら2時間以上経ってて、店内の照明が少し暗くなった気がした。夜の10時を回ってたんだと思う。お腹はもう限界だったけど、誰も「帰ろう」とは言い出さない。デザートのメニューを眺めながら、「ホットク頼む?」「もう入らないって」「じゃあシェアで」みたいな、終わらせたくない空気が漂ってた。
結局、ホットクを注文して、4人で分けた。シナモンの甘い香りと、外側のカリッとした食感。辛かった口の中が、少しだけ落ち着く。
会計のとき、レジの横に置いてあったキャンディーを一つずつもらって、店を出た。外の空気が冷たくて、火照った顔に気持ちよかった。駅まで歩きながら、「また来ようね」って誰かが言って、みんなが「うん」って答える。
でも次に集まるのは、たぶん2ヶ月後くらいになるんだろうな。そんなもんだよね、大人の友達って…。

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