彼女と料理する日曜の午後、カレーのスパイスと会話の匂い

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日曜の昼下がり、彼女が冷蔵庫を開けて「今日カレー作ろうよ」って言った。

僕の部屋より明らかに広いキッチンで、彼女は玉ねぎを3個も取り出してまな板に並べてる。正直、僕はカレーなんてルーを溶かすだけの食べ物だと思ってたんだけど、彼女が「スパイスから作る」とか言い出して、ちょっと待ってくれと。クミンとかコリアンダーとか、そんな単語を料理で使う日が来るなんて思ってなかった。「これ本当に美味しくなるの?」って聞いたら、「知らない」って即答されて笑った。

玉ねぎを切り始めたら案の定、二人とも目がしょぼしょぼになって、僕は途中でリタイアして彼女に任せることにした。ずるいって言われたけど、涙でまな板が見えないんだから仕方ない。キッチンの窓を開けたら、外から誰かの洗濯物を干す音が聞こえてきて、なんだか平和な感じがした。彼女は器用に玉ねぎをみじん切りにしながら、「あのね、昔ね」って急に話し始めた。中学生の頃、家庭科の調理実習でカレーを作ったときに、砂糖と塩を間違えて大惨事になった話。クラス全員に謝り回ったらしい。

そういえば僕も昔、一人暮らし始めたばかりの頃に米を研がずに炊いて、なんか粉っぽいご飯ができたことがある。あれは本当に悲しかったな…だけど。

彼女が鍋に油を引いて、玉ねぎを炒め始める。じわじわと甘い香りがキッチンに広がって、それがだんだん茶色く色づいていくのを二人で眺めてた。「20分くらい炒めるんだって」と彼女が言うから、僕はその間にスパイスの瓶を並べることにした。ターメリック、ガラムマサラ、カイエンペッパー。どれも初めて見る名前ばかりで、なんだか錬金術師になった気分。蓋を開けて匂いを嗅いでみたら、それぞれ全然違う香りがして面白かった。特にクミンは、なんていうか、異国って感じ。

「そろそろいいかな」って彼女が言うから鍋を覗き込んだら、玉ねぎが飴色になってて、これが本当にさっきの白い玉ねぎだったのかと信じられなくなる。ここにトマトとニンニクと生姜を入れて、さらに炒める。キッチン全体がもうカレーの匂いで満たされてて、お腹が鳴った。彼女も「お腹空いたね」って笑ってる。

スパイスを入れる瞬間、彼女が「せーの」って言うから、二人で一緒に振り入れた。途中でカイエンペッパーを入れすぎて、「辛くなりすぎたかも」って焦ったけど、もう後戻りできない。鶏肉を入れて、水を注いで、あとは煮込むだけ。蓋をした鍋からぐつぐつと音がして、その音を聞きながら二人でキッチンの床に座り込んだ。

彼女が「ねえ、これ失敗したらどうする?」って聞いてくる。「コンビニ行く」って答えたら、「最悪」って言われた。でも本当にそう思ってるわけじゃなくて、たぶん失敗しても笑って食べるんだろうなって、なんとなくわかってた。

30分くらい煮込んだところで味見をしてみる。スプーンですくって、ふうふう冷ましてから口に入れたら、思ってたよりずっと美味しくて驚いた。スパイシーで、でも辛いだけじゃなくて、ちゃんと深みがある。彼女も味見して、「意外といけるね」って嬉しそうに笑ってる。意外って何だよって思ったけど、まあ確かに意外だった。

ご飯を炊いて、皿に盛り付けて、二人で並んでテーブルに座る。最初の一口を食べたとき、彼女が「やっぱりちょっと辛い」って水を飲んでた。僕も辛かったけど、それがなんだか楽しくて、汗をかきながら食べ続けた。

窓の外はもう夕方の光になってて、キッチンにはまだスパイスの香りが残ってる。皿を洗いながら、彼女が「また作ろうね」って言った。僕は「次はもうちょっとカイエンペッパー減らそう」って答えた。

そんな日曜日だった。

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