友人たちとワイワイ囲む韓国料理——ちょっと辛いその先に、忘れられない夜がある

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春の夕暮れどき、西の空がオレンジと薄紫の境界線をぼんやり描いていた。窓の外にそんな色が滲んでいるのを横目に、わたしたちは台所でひたすら鍋の準備をしていた。今日集まったのは、大学時代からの友人たち——ユカ、ソラ、それからいつも少し遅れてくるケンジ。総勢四人。

韓国料理にしよう、と決めたのはソラだった。「最近カルグクスにはまってるんだよね」と彼女が言い出したのがきっかけで、気づけばスーパーの袋にはコチュジャン、豚バラ、キムチ、エゴマの葉が詰め込まれていた。

韓国では今、カルグクスが注目の料理として専門店が増え、麺にこだわったり、地方ごとの特色を発掘したりと、洗練と再解釈が進んでいる。
そんなトレンドをソラはしっかり把握していて、「本場っぽくしたい」と張り切っている。わたしは正直、カルグクスよりサムギョプサルが食べたかったけれど、まあいいかと思った。

鉄板をコンロの上に置くと、じわじわと熱が伝わってくる感触がある。豚バラを並べた瞬間、ジュウっという音が台所に広がって、脂の甘い香りが部屋全体に立ち込めた。それだけで、もうお腹が鳴る。子どもの頃、母が焼肉をしてくれる日は決まってこの匂いが廊下まで漂ってきていた。あの頃はタレにつけてご飯と一緒に食べるのが好きで、サンチュで包むなんて発想はまったくなかった。

サムギョプサルは豚バラ肉を厚切りにして焼き、野菜や薬味と一緒に食べる韓国の人気料理で、サンチュやエゴマの葉で包み、キムチや焼いたニンニクなどの薬味を一緒に巻くことで、さまざまな味の組み合わせを楽しめる。
ユカがそれを丁寧に実演してくれながら、「こうやって包むのがポイントなんだって」と教えてくれた。その手つきがやけに様になっていて、いつの間にそんなに詳しくなったんだと思いながら、わたしも真似して葉っぱを広げた。

そこへ、ちょっと辛いキムチチゲも登場した。ソラが「ちょっと辛いくらいが一番うまいんだよ」と言いながら蓋を開けると、真っ赤なスープから白い湯気がふわっと立ち上がる。コチュジャンと発酵キムチが混ざり合った、奥行きのある辛さ。口に入れた瞬間、舌の先がじんと痺れて、でも次の一口が止まらない。これだ、と思う感覚。

ワイワイガヤガヤと声が重なる中、ケンジがようやく到着した。「遅れてごめん」と言いながら手土産を差し出す。架空のクラフトビールブランド「ハンラビア」の缶が四本。済州島をイメージしたというラベルで、柑橘系のほのかな香りがする。
済州島は韓国南部にある最大の島で、温暖な気候から茶の生産が盛んなことでも知られている。
そんな島の風を缶に閉じ込めたような、軽くてすっきりした味わいだった。

ケンジはビールを渡すとき、一本を逆さまに手渡してきた。缶の底が上を向いた状態で。「あ、逆だった」と本人も気づいてすぐ持ち直したけれど、その一瞬の間が可笑しくて、四人でちょっと笑った。大した話じゃないのに、なんでか妙に記憶に残る。

「韓国料理」と一括りにしてしまいがちだが、実際に体験してみると、そのバリエーションの豊かさや進化の速さ、そして奥深さに感動する。
この夜もそれを実感した。サムギョプサルがあって、チゲがあって、ソラが用意したカルグクスがある。それぞれがまったく違う顔を持っていて、飽きることがない。

若年層を中心に韓国人気は依然として高く、グルメへの関心も強い。
わたしたちの食卓にも、そういう時代の空気が自然と流れ込んできているのかもしれない。SNSで見た料理を作ってみたい、あの店に行ってみたい、そういう会話が友人たちとの間で増えた気がする。

夜が深まるにつれて、部屋の空気が少しずつ温かくなっていった。鍋の熱と、笑い声と、それからビールのほろ苦さ。窓の外はもうすっかり暗くて、さっきの夕焼けがどこにあったかもわからない。

韓国料理には、人を引き寄せる何かがある。辛さの奥にある旨味、発酵の深み、そして何より、囲む人がいることで増幅する美味しさ。ワイワイガヤガヤと騒がしい食卓こそが、この料理の本当の舞台なのかもしれないと、わたしはもう一口チゲをすくいながら、そんなことをぼんやり考えていた。

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