
去年の秋、家族でキャンプに行ったときのことを思い出す。
準備段階で私が一番気合を入れたのは、実は料理のメニューだった。キャンプ雑誌を3冊も買い込んで、SNSで「映える」キャンプ飯の写真を保存しまくって、スキレットまで新調した。カレーとバーベキューだけじゃ芸がないって思ったんだよね。アウトドアブランド「マウンテンフレーバー」の調味料セットも買った。当日の朝、子どもたちに「今日はパパが本気出すから」なんて宣言して、意気揚々と出発したのを覚えてる。
現地に着いたのは午後2時過ぎ。テント設営だけで1時間以上かかって、もうその時点で腕がパンパンになってた。夕食の準備を始めたのは5時を回ってから。メニューはダッチオーブンで作るローストチキンと、野菜のグリル、それにアヒージョ。レシピ通りに進めようとしたんだけど、火加減の調整が全然うまくいかない。炭の火力が強すぎて、アヒージョのオリーブオイルがバチバチ跳ねるし、チキンは外側だけ焦げて中は生っぽい。
娘が「お腹すいた」って言い始めたのが6時半。息子は焚き火の周りでふらふらしてるし、妻は「大丈夫?手伝おうか?」って何度も声をかけてくる。その度に「大丈夫、もうすぐできるから」って強がってたけど、内心めちゃくちゃ焦ってた。
そういえば中学生の頃、家庭科の調理実習で卵焼きを焦がして、班のメンバーに謝りまくったことがある…あの時と同じ気持ちだった。
結局、完成したのは8時近く。もう真っ暗で、ヘッドライトの明かりだけが頼りの状態。テーブルに並べた料理を見て、正直がっかりした。チキンは皮がカリカリを通り越して炭化してるし、野菜は一部生焼けだし、アヒージョに至っては具材が油の中で迷子になってる。「映える」なんて言葉からは程遠い仕上がり。でも子どもたちは「いただきます!」って元気に食べ始めた。娘は焦げた皮の部分を避けながらチキンをほおばって、「お肉柔らかい」って言ってくれた。息子は野菜が嫌いなのに、なぜかグリルしたズッキーニを「これ美味しい」って食べてる。
妻は笑いながら「頑張ったね」って言った。その言葉に、なんだか救われた気がした。
キャンプの料理って、家のキッチンとは全然違う。火加減は風任せだし、調理器具は限られてるし、照明だって不十分。レシピ通りになんて絶対いかない。それでも、というか、だからこそ面白いのかもしれない。失敗も含めて、その場の空気ごと味わうものなんだと思う。煙の匂いがついた服、パチパチと弾ける薪の音、冷たい夜風、星空の下で食べる温かい料理。完璧じゃないからこそ、記憶に残るんだよね。
翌朝の朝食はシンプルにホットサンドとコーヒーにした。前日の反省を活かして、無理しないメニュー。ホットサンドメーカーに食パンとハム、チーズを挟んで焼くだけ。これが予想以上にうまくいって、子どもたちも「昨日より美味しい!」って喜んでた。複雑な気持ち。
家族でのキャンプ料理は、完成度よりもプロセスが大事なのかもしれない。一緒に火をおこして、煙たがりながら調理して、焦げても笑い合える。そういう時間が、実は一番の「ごちそう」だったりする。次回はもっとシンプルなメニューにしようと思ってる。でも、またきっと欲張って新しいレシピに挑戦するんだろうな…懲りない性格だから。

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