
週末の夜、久しぶりに友人たちが集まった。仕事や家庭のことで忙しい日々が続いていたが、ようやく全員のスケジュールが合ったのだ。集合場所は、駅前にできたばかりの韓国料理店。ネオンが煌めく店の前で待ち合わせると、次々と懐かしい顔が現れる。「久しぶり!」「元気だった?」そんな挨拶が飛び交い、店に入る前からすでにワイワイガヤガヤとした雰囲気に包まれていた。
店内に入ると、韓国料理特有の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。焼肉の煙、キムチの発酵した香り、そしてコチュジャンの甘辛い匂い。それらが混ざり合って、食欲を刺激する。テーブルに案内されると、さっそくメニューを広げて、みんなで何を注文するか相談が始まる。「チーズタッカルビがいいんじゃない?」「いやいや、サムギョプサルでしょ!」「チゲも食べたいな」と、それぞれの希望が飛び交う。結局、あれもこれもと欲張って、テーブルいっぱいに料理を注文することになった。
最初に運ばれてきたのは、色とりどりのナムルとキムチの盛り合わせ。白菜キムチ、大根キムチ、きゅうりのオイキムチなど、それぞれに個性がある。「これ、ちょっと辛いけど美味しい!」と誰かが言うと、「本当だ、でもこの辛さがクセになるよね」と別の友人が応じる。ビールのグラスを傾けながら、キムチをつまむ。炭酸が辛さを和らげて、また次の一口が欲しくなる。韓国料理の魅力は、この「ちょっと辛い」が絶妙なバランスで成り立っているところだ。辛すぎて食べられないわけではないが、確実に舌を刺激して、会話を弾ませる。
次に登場したのは、ジュージューと音を立てるサムギョプサル。厚切りの豚バラ肉が鉄板の上で踊るように焼かれていく。「誰が焼く?」「じゃあ俺がやるよ」と、自然と役割分担が決まる。焼き手の周りに他の友人たちが集まり、「もうひっくり返していい?」「まだ早いって!」とアドバイスが飛ぶ。こうした共同作業が、韓国料理を囲む楽しさの一つだ。一人で静かに食事をするのではなく、みんなで一つのテーブルを囲み、同じ料理を分け合う。その過程そのものが、友情を深めるコミュニケーションになっている。
焼きあがった肉をサンチュで包み、サムジャンをたっぷり塗って、ニンニクとキムチを添えて口に運ぶ。「うまい!」という声が同時に上がる。肉の脂とサンチュのシャキシャキ感、そしてサムジャンのちょっと辛い風味が口の中で一体となる。「これ、何個でもいけるね」「わかる、止まらないよね」と、次々と手が伸びる。テーブルの上では、チゲ鍋もグツグツと煮えている。真っ赤なスープの中には、豆腐、きのこ、野菜、そして魚介がたっぷり入っている。「これもちょっと辛いけど、寒い季節には最高だよね」と誰かが言うと、みんなが頷く。
料理が進むにつれて、会話もどんどん盛り上がっていく。仕事の愚痴、最近見た映画の話、昔の思い出話。話題は次から次へと移り変わり、笑い声が絶えない。韓国料理を囲むと、なぜかこうしてワイワイガヤガヤとした雰囲気になる。それは料理自体が持つエネルギーのせいかもしれない。ちょっと辛い刺激が舌を活性化させ、自然と声も大きくなる。共同で焼いたり、取り分けたりする作業が、コミュニケーションを促進する。そして何より、美味しいものを食べている時の幸福感が、人を開放的にさせるのだろう。
チーズタッカルビが運ばれてくると、テーブルはさらに華やかになった。鶏肉と野菜がコチュジャンベースのソースで炒められ、その上にとろけるチーズがたっぷりとかかっている。「これ、インスタ映えするね」と誰かがスマホを取り出し、みんなで写真を撮る。そして熱々のうちにチーズを絡めて食べる。「辛さとチーズの相性、最高すぎる」「このちょっと辛いくらいが、ちょうどいいんだよね」と、またもや絶賛の声が上がる。辛さとまろやかさのコントラストが、味覚を刺激し続ける。
デザートにはホットクを頼んだ。外はカリッと、中はもちもちの生地の中に、シナモンと黒糖のシロップがとろりと入っている。辛い料理の後の甘いデザートは、口の中をリセットしてくれる。「今日、本当に楽しかったね」「また来ようよ」と、みんなが満足そうに微笑む。テーブルの上には、空になった皿が並んでいる。それは、充実した時間を過ごした証だ。
会計を済ませて店を出ると、夜風が心地よい。「次はいつ集まれる?」「来月あたりどう?」と、もう次の約束を話し合っている。韓国料理を囲んだこの夜は、ただ美味しいものを食べただけではない。友人たちとの絆を再確認し、日常のストレスを忘れて笑い合った、かけがえのない時間だった。ちょっと辛い料理が、ちょっと刺激的な会話を生み、ワイワイガヤガヤとした雰囲気が、心を温めてくれた。
こうして友人たちと過ごす時間は、人生において何よりも大切なものだ。忙しい日々の中で、ついつい疎かになりがちな人間関係。しかし、こうして定期的に集まり、美味しい料理を囲むことで、その絆は保たれる。韓国料理は、そんな大切な時間を彩るのに最適な選択だ。共有することを前提とした料理スタイル、ちょっと辛い刺激、そしてエネルギッシュな雰囲気。それらすべてが、人と人とを結びつける力を持っている。次に友人たちと集まる時も、きっとまた韓国料理店を選ぶだろう。そしてまた、ワイワイガヤガヤと楽しい時間を過ごすのだ。


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