週末の夕暮れ時、私のアパートのキッチンからは、トマトソースの香ばしい香りが漂っていました。今日は特別な日。大学時代からの親友たちと、久しぶりに集まってホームパーティーを開くことになったのです。イタリアンをテーマにした手作り料理で、みんなの心と胃袋をつかもうと意気込んでいました。
「まずはパスタの準備からかな」と独り言を言いながら、デュラム小麦のセモリナ粉を捏ね始めます。手作りパスタは時間がかかりますが、その分だけ愛情も込められます。粉と卵を混ぜ合わせながら、友人たちの顔が次々と思い浮かびました。
まもなく、玄関のチャイムが鳴り響きます。「お邪魔しまーす!」という明るい声とともに、真っ先に到着したのは、料理好きの親友・美咲でした。彼女の手には、自家製のティラミスが。「これ、昨日から準備してたの!」と得意げな表情を見せます。
続いて、家族ぐるみの付き合いがある健一家が到着。奥さんの由美子さんは、手作りのフォカッチャを、可愛い娘の詩織ちゃんは、母親と一緒に作ったというハーブオイルを持ってきてくれました。「パパが言ってたよ、ここのパーティーは絶対美味しいって!」と詩織ちゃんが無邪気に話す姿に、みんなの顔がほころびます。
キッチンは瞬く間に賑やかになりました。美咲がトマトソースの味見を手伝い、由美子さんがサラダの盛り付けを担当。詩織ちゃんは「私もお手伝いする!」と張り切って、テーブルセッティングを任されました。
そうこうしているうちに、残りのメンバーも続々と到着。医師の太郎は夜勤明けにも関わらず、ワインを2本も抱えて現れました。「これ、イタリアで見つけた掘り出し物なんだ」と自慢げに語ります。デザイナーの香織は、自作のテーブルクロスを持参。「パーティーが映えるでしょ?」と目を輝かせながら説明してくれました。
キッチンからリビングまで、笑い声と料理の香りが充満していきます。手作りパスタは、みんなで力を合わせて成形。不揃いな形がかえって愛らしく感じられます。トマトソースには、太郎お勧めのワインを少々加えて、より深い味わいに仕上げました。
「わぁ、このソース絶対美味しいやつだ!」
「パスタ、こんなに腰があるの初めて食べた!」
「詩織ちゃん、このハーブオイル上手に作れたね!」
料理を囲んでの会話は尽きることを知りません。学生時代の思い出話に花が咲き、仕事での苦労話に共感し合い、それぞれの近況報告に一喜一憂。時には大きな笑い声が部屋中に響き渡ります。
美咲のティラミスは、予想以上の大好評。「このレシピ、教えて!」という声が相次ぎ、彼女は得意げに作り方を説明していました。詩織ちゃんは「おうちでも作りたい!」と目を輝かせ、由美子さんと二人で熱心にメモを取っています。
窓の外では、夕日が徐々に沈んでいきました。部屋の明かりが温かみを増し、ワイングラスに映る光が幻想的な雰囲気を作り出します。誰かが「この瞬間を写真に収めたい」と言い出し、みんなでスマートフォンを手に取り、思い思いの一枚を撮影し始めました。
料理を通じて、私たちの絆はより一層深まっていきます。イタリアンという共通のテーマがあることで、料理の話題には事欠きません。太郎は留学時代に食べた本場のパスタの思い出を語り、香織はイタリアンレストランでのアルバイト経験を楽しそうに話します。
「次は私の家でパーティーしましょう!」と由美子さんが提案すると、みんなが即座に賛同。「今度は和食がいいな」「いや、エスニックも面白そう!」と、次回の企画についても盛り上がります。
夜も更けてきた頃、詩織ちゃんが眠そうな目をこすり始めました。「そろそろ帰ろうか」という声が上がり、名残惜しみながらも、片付けを始めます。でも、これは終わりではなく、新たな集まりの始まりの予感がしていました。
帰り際、みんなが手分けして食器を洗い、キッチンを綺麗に片付けてくれました。「今日は本当に楽しかった」「また絶対集まろうね」という言葉を残して、一人また一人と帰っていきます。
最後に残った美咲が「こういう時間って、本当に大切だよね」とポツリと言いました。私も深くうなずきます。料理を作り、食べ、語り合う。そんな当たり前の時間が、かけがえのない思い出になっていくのだと実感した夜でした。
翌朝、SNSには昨夜の写真が次々とアップされていました。みんなの笑顔、出来立ての料理、賑やかな食卓の様子。コメント欄には「最高の夜だった!」「次回が待ち遠しい!」という言葉が並びます。
家族のような温かさを感じられる友人たちと過ごした特別な一夜。手作り料理を通じて育まれた絆は、きっとこれからも続いていくことでしょう。キッチンに立つたびに、この素敵な思い出が蘇ってくるに違いありません。
そして私は決意しました。これからも定期的にみんなを招いて、料理でつながる幸せな時間を作っていこうと。なぜなら、美味しい料理と大切な人たちとの時間ほど、人生を豊かにしてくれるものはないのだから。
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