
友達の家に集まると決まったのは、たしか水曜日の夜だった。
誰が言い出したのかも覚えてないんだけど、LINEグループで「今週末、韓国料理でも食べない?」って流れになって、気づいたら土曜の夜に5人で集合することになってた。こういうノリで決まる予定って、なぜか一番楽しいんだよね。計画しすぎないというか、勢いで決まったやつのほうが盛り上がる。
当日、スーパーで買い出しをしながら「これ辛いかな」「いや、これくらいなら大丈夫でしょ」なんて言いながらカゴに放り込んでいく感じがもう楽しい。キムチは二種類買って、コチュジャンとか豆板醤とかの調味料コーナーで迷って、結局「まあ全部買っちゃえ」ってなる。チーズも買った。チーズタッカルビ作るかもしれないし、とりあえずあれば何とかなる精神。
料理が始まると、キッチンは一気にカオスになる。包丁を使う人、フライパンをかき混ぜる人、味見ばっかりしてる人。私はというと、野菜を切る係になったんだけど、ニラを切ってるときの匂いがもうたまらなくて、「これ絶対うまいやつじゃん」ってテンションが上がってくる。換気扇を回してるのに部屋中に広がる唐辛子の香りと、ジュージュー焼ける音。この瞬間がたまらない。
そういえば去年の夏、一人で韓国料理屋に入ったことがあって。
あれは失敗だった。サムギョプサルを一人で注文したら、店員さんに「お一人様ですか?」って二度聞かれて、なんだか申し訳ない気持ちになった。しかも焼くのも自分でやらなきゃいけなくて、タイミングがわからなくて焦げさせるし。結局、美味しいんだけど全然楽しくなかったんだよね。韓国料理って、やっぱり誰かとワイワイ食べるものなんだって、そのとき思った。
話を戻すと、テーブルに料理が並び始めると圧巻だった。チヂミ、トッポギ、チーズタッカルビ、それからなぜか誰かが作ったキンパまである。「これ何時間かかったの?」って聞いたら、「知らん、気づいたら出来てた」って返ってきて笑った。全員で手分けして作ると、あっという間に豪華な食卓ができあがる。
最初の一口を食べたときの「うまっ!」っていう声が重なるのが好き。ちょっと辛いんだけど、そのちょっとがちょうどいい。辛すぎると会話が止まっちゃうけど、このくらいなら「辛い辛い」って言いながらも箸が止まらない。誰かがビールを注いでくれて、誰かがチーズをもっと足して、誰かが「これマジで店より美味いんだけど」って言う。
料理を取り合う瞬間も楽しい。「それ最後の一個じゃん!」「いや、半分こしよ」「じゃんけんで決めよう」とか言いながら、結局誰かが譲って、譲られた方が申し訳なさそうにしながらも嬉しそうに食べる。こういうやり取りが、なんか温かいんだよね。
食べ終わった後のテーブルは戦場みたいになってる。空いた皿が積み重なって、キムチの汁がちょっとこぼれてて、でも誰も片付けようとしない時間がある。お腹いっぱいで動けないし、まだ話したいことがあるし。誰かがスマホで音楽をかけて、ゆるい空気が流れる。
辛いものを食べた後の独特の満足感ってあるよね。口の中がまだピリピリしてて、額にうっすら汗をかいてて、でも心地いい。「次は何作る?」なんて話になって、「タッカンマリ食べたい」「スンドゥブチゲもいいよね」って盛り上がる。
結局、片付けを始めたのは日付が変わる頃だった。洗い物をしながら、「今日楽しかったね」とか特別なことは言わない。ただ「またやろう」って一言だけ。それで十分だった。
帰り道、夜風が冷たくて気持ちよくて、服にしみついた唐辛子の匂いを嗅ぎながら歩いた。こういう夜があるから、また明日も頑張れる気がする…って、ちょっと言いすぎか。


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