
友達の家で韓国料理を作ることになった。
きっかけは覚えてない。誰かが「チーズタッカルビ食べたい」って言い出したのか、それとも冷蔵庫にコチュジャンが余ってたからなのか。気づいたら六人くらい集まって、スーパーで鶏肉とキムチとチーズを買い込んでいた。ホットプレートを囲んで座ると、もうその時点で妙なテンションになってる。料理が始まる前から、である。
私は辛いものがそこまで得意じゃない。でも韓国料理の辛さって、なんていうか「逃げ場がある辛さ」なんだよね。チーズで中和できるし、ご飯と一緒に食べればマイルドになる。だから怖くない。むしろ、ちょっとずつ攻めていける感じが楽しい。最初は「うわ、辛っ」って言いながら水を飲んでたのに、途中から「もうちょいコチュジャン足そうか」とか言い出す自分がいる。人間の適応力ってすごい。
ホットプレートの上でジュージュー音を立てながら、鶏肉が焼けていく。その匂いがたまらなくて、みんな箸を持ったまま待機してる。「まだ?」「もうちょい」「火、強すぎない?」とか言いながら、誰かがスマホで焼き加減を調べ始める。レシピ動画を見ながら「あ、キムチ先に炒めるんだ」とか今更気づく。もう遅い。
去年の夏、別の友達とサムギョプサルの店に行ったときのことを思い出した。あのときは店員さんが全部焼いてくれるタイプの店で、私たちは何もしなくてよかった。楽だったけど、なんか物足りなかったんだよね。自分たちで焼くからこそ、失敗も含めて楽しいんだと思う。焦がしたり、チーズ溶かしすぎてホットプレートにこびりついたり。そういう「事件」が会話のネタになる。
チーズが溶けてきたあたりで、みんなの箸が一斉に伸びる。「いただきます」も言わずに食べ始めてる。熱々のチーズと鶏肉を口に入れた瞬間、「ん〜〜!」っていう謎の声がそこら中から聞こえる。言葉にならない満足感。辛さが舌を刺激して、でもチーズのまろやかさが追いかけてくる。この絶妙なバランスがたまらない。
なぜか韓国料理を食べてるときって、話が弾むんだよね。ワイワイガヤガヤしてる。普段あんまり喋らない友達も、箸を動かしながらポロっと本音を言ったりする。「実は仕事辞めようと思ってて」とか「最近ちょっと気になる人がいて」とか。辛いものを食べてるときの高揚感が、心のガードを緩めるのかもしれない。それとも、みんなで同じ鍋をつついてる一体感が、距離を縮めるのか。
途中で誰かが「ラーメン入れようよ」って言い出して、インスタント麺を投入する。これがまた最高で。スープを吸った麺が、さっきまでの鶏肉やキムチの旨味を全部持っていく。シメの概念、韓国料理には絶対必要だと思う。お腹いっぱいなのに、なぜか食べられる不思議。
ホットプレートの温度が下がってきて、チーズが固まり始める頃。会話もちょっと落ち着いてくる。さっきまでの熱気が、ゆっくり冷めていく感じ。「片付け、どうする?」って誰かが言うけど、誰も動かない。動きたくない。このダラダラした時間が、実は一番好きだったりする。
結局、私たちは何を食べたかったのか。チーズタッカルビ? それとも、こうやって集まって、くだらない話をしながら同じものを食べる時間? 多分、両方。
次は何作ろうか、なんて話をしながら、私はまだ温かいホットプレートに手をかざしてた。


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