
焦げたソーセージを見ながら、娘が笑ってる。
キャンプ場で料理するって、正直に言うと最初は憂鬱だった。家のキッチンなら勝手がわかるのに、炭火とか飯盒とか、そういう「アウトドア感」に満ちた道具を前にすると、途端に自分が料理初心者に戻ったみたいな気分になる。去年の夏、初めて家族でキャンプに行ったときは、カレーを作るだけで2時間かかった。火加減がわからなくて、ずっと弱火のまま野菜を煮込んでたんだよね。夫は「キャンプだからこれでいいんだよ」って言ってくれたけど、内心では「家で作れば30分なのに」って思ってた。
料理って、環境が変わるだけでこんなに難しくなるんだって実感したのは、まさにあの瞬間だった。
包丁の切れ味も違うし、まな板は小さいし、調味料も最小限しか持ってきてない。普段なら「ちょっと味が薄いかな」と思ったら醤油を足すとか、「コクが足りない」と感じたらバターを追加するとか、そういう微調整ができるんだけど、キャンプ場ではそうはいかない。持ってきた塩と醤油とオリーブオイルだけで何とかしなきゃいけなくて、それがすごくもどかしかった。息子は「ママの料理、いつもと違う」ってはっきり言うし。子どもって容赦ないよね…
でも今年の春、3回目のキャンプに行ったときに何かが変わった。朝の6時過ぎ、テントの外で焚き火の準備をしながら、冷たい空気の中でコーヒーを淹れた。お湯が沸く音、鳥の声、まだ寝ている家族のテントからの寝息。その静けさの中で、「別に完璧じゃなくていいんだ」って思えた瞬間があったんだよね。ベーコンを焼いて、食パンをトーストして、それだけ。シンプルだけど、焚き火の煙の匂いがついた朝食は、家で食べるどんな豪華な料理よりも美味しく感じた。
ちなみに、私が使ってるスキレットは「ファイヤーサイドクック」っていうブランドのやつなんだけど、これがけっこう重宝してる。最初は重くて扱いづらいと思ってたんだけど、慣れてくると熱の伝わり方が均一で、焦げ付きにくいのがいい。
家族でキャンプ料理をするようになって気づいたのは、子どもたちが手伝いたがるってこと。家だと「危ないから」「時間がないから」って理由で遠ざけてたんだけど、キャンプだと時間がたっぷりあるし、多少失敗しても「まあいいか」って思える。娘は野菜を洗うのが好きで、息子は火起こしに興味津々。夫は肉を焼く係に自然となってて、私は全体の指揮を取りながら、みんなの様子を見てる。
これって、普段の家事とはまったく違う感覚なんだよね。
料理が「作業」じゃなくて「イベント」になる。夕方の4時頃から準備を始めて、日が暮れるまでゆっくり時間をかける。途中で子どもたちが飽きて遊びに行っても、「まあそのうち戻ってくるでしょ」って余裕が持てる。家だったら「ちょっと手伝ってよ!」ってイライラしてたと思うけど。
失敗も笑い話になる。この前なんて、マシュマロを焼こうとして、娘が火に近づけすぎて一瞬で炭になった。真っ黒な塊を見て、家族全員で大笑いした。「これ食べられる?」って娘が聞くから、「食べられるけど、美味しくはないと思う」って答えたら、夫が「じゃあ俺が食べる」って言って本当に食べてた。あの光景、今でも思い出すと笑える。
キャンプの料理って、レシピ通りにいかないのが当たり前なんだよね。風が強くて火が安定しないとか、思ったより気温が低くて食材が冷えてるとか、予想外のことばかり起こる。でもそれが逆に面白い。「こうしなきゃいけない」っていう縛りから解放されて、「今あるもので何とかする」っていう柔軟さを学んだ気がする。
息子が「次のキャンプではピザ作りたい」って言ってる。ダッチオーブンでピザなんて作れるのかな、って最初は思ったけど、調べてみたら意外とできるらしい。生地をこねるところから子どもたちと一緒にやったら楽しそうだよね。失敗してもいいし、むしろ失敗した方が記憶に残るかもしれない。
家族でキャンプ料理をするようになってから、普段の食卓も少し変わった気がする。「完璧じゃなくてもいい」っていう感覚が、日常にも持ち込まれたというか。子どもが手伝って野菜の切り方が不揃いでも、「まあいいか」って思えるようになった。料理が少し焦げても、「これはこれで香ばしい」って前向きに捉えられる。
次のキャンプは夏の終わり頃を予定してる。今度は何を作ろうかな、って考えるだけでワクワクする。でも、計画通りにいかなくても、それはそれで…


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