
去年の夏、僕は飯盒を焦がした。
家族でキャンプに行くと決まったとき、妻が「今回は料理、お願いね」って言ってきて。普段から台所に立つことはあるけど、キャンプとなると話は別だ。火加減が読めない。風は吹く。子どもたちは「お腹すいた」を連呼する。準備不足もいいところだったけど、まあなんとかなるだろうと思ってた。甘かった。
テントを張り終えたのが午後3時過ぎ。設営に手間取って、予定より1時間も遅れてる。夕飯の支度を始めなきゃいけないのに、薪がまだ湿ってる。着火剤を多めに使ってなんとか火をおこしたものの、火力が安定しない。長男が「カレー食べたい」って言ってたから、カレーを作ろうとしてたんだけど…ご飯が炊けない。
飯盒炊飯なんて、キャンプ雑誌で見たときは簡単そうだったのに。
火が強すぎたのか、底がすぐ焦げ臭くなって、慌てて火から下ろした。蓋を開けると、上のほうは芯が残ってて、下は真っ黒。長女が覗き込んで「パパ、これ食べられるの?」って聞いてくる。食べられるかどうかで言えば、食べられなくはない…けど。
そういえば、大学生の頃に友達とキャンプしたときも似たようなことがあった。あのときは夜中にカップラーメンで済ませたんだっけ。今回はそうもいかないけど。
結局、焦げた部分を取り除いて、残ったご飯でなんとかカレーを作った。量が足りなくて、妻が持ってきてたレトルトご飯を追加で温めることになったんだけど、それも火加減がわからなくて湯煎に時間がかかる。子どもたちはもうお腹ペコペコで、次男なんて「もう食べる!」ってスプーン握りしめて待機してる。
カレーのルーを溶かしてるときに気づいたんだけど、野菜の切り方がバラバラすぎた。人参は大きいまま、玉ねぎは小さすぎ、じゃがいもは中途半端。包丁が普段使ってるやつと違うから、なんかうまく切れなくて。キャンプ用の小さいまな板も使いづらい。妻は横で焚き火の火を見ながら「大丈夫?」って何度か聞いてきたけど、大丈夫なわけないでしょって心の中で思ってた。
ようやく完成したカレーは、見た目も味も、正直微妙だった。ご飯は固いし、ルーはなんか水っぽい。でも子どもたちは「美味しい!」って言いながら食べてくれて。長男なんておかわりまでした。本当に美味しいのか、それとも空腹が最高の調味料なのか。
食後、妻が「次は私が作るね」って笑いながら言ってきた。助かる、正直。
翌朝の朝食はホットサンドにした。これなら失敗しないだろうと思って。ホットサンドメーカーに食パンとハム、チーズを挟んで火にかける。今度は火加減を弱めにして、じっくり焼いた。外はカリッと、中はチーズがとろける感じに仕上がって、これは成功だった。長女が「昨日のカレーよりいいね」って言ってきて、ちょっと傷ついたけど。
キャンプ場の朝は空気が冷たくて、焚き火の前にいると煙の匂いが服にしみついていく。鳥の声が遠くで聞こえて、まだ他のテントからは人の気配がしない。この時間帯が一番好きかもしれない。料理の失敗も、なんだか些細なことに思えてくる。
帰り道、車の中で次男が「また来たい」って言った。長男も「次はパパ、ちゃんとご飯炊けるようになってね」だって。
練習しとくよ、家で。

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