朝もやの立ち込める湖畔のキャンプ場で、私たち家族の特別な週末が始まろうとしていました。テントを張り終えた夫が満足げに腰に手を当て、「よし、完璧だ!」と声を上げると、8歳の娘と6歳の息子が歓声を上げながら駆け寄ってきました。
キャンプ場に到着してからの1時間は、いつも私たち家族にとって最も忙しい時間です。テントの設営、タープの取り付け、キャンプ道具の整理と、やることが山積みです。でも、この忙しさも家族で協力し合える貴重な時間だと感じています。子どもたちは小さなペグハンマーを持って、できる範囲でテント設営を手伝ってくれます。
「ママ、お腹すいた~」と息子が訴えてきました。時計を見ると、もう正午を回っています。「よし、じゃあみんなでランチの準備をしましょう」と声をかけると、子どもたちは目を輝かせながら頷きました。
キャンプでの料理は、普段の家庭料理とはまた違った魅力があります。今回は、事前に下準備してきた具材で、ダッチオーブンを使ったキャンプ定番のローストチキンに挑戦することにしました。娘は野菜を洗うのを手伝い、息子はテーブルセッティングを担当します。
夫は手慣れた様子で炭に火をつけ、程よい温度になるのを待ちます。その間、私はチキンに香辛料とハーブを丁寧にすり込んでいきます。自然の中で料理をする時間は、不思議と心が落ち着きます。周りから聞こえてくる鳥のさえずりや、風に揺れる木々の音が、日常では味わえない穏やかな雰囲気を作り出してくれます。
ダッチオーブンから立ち上る香ばしい匂いに、子どもたちは何度も「まだ?まだ?」と聞きに来ます。「もう少し待ってね」と答えながら、サイドメニューのグリル野菜も準備していきます。カラフルなパプリカやズッキーニ、ナスなどを串に刺していく作業を、娘が楽しそうに手伝ってくれました。
約1時間後、ついに料理が完成です。ふたを開けると、こんがりと焼けたローストチキンの香りが周囲に広がりました。「わぁ!すごい!」と子どもたちが目を丸くして驚きの声を上げます。テーブルには、ローストチキン、グリル野菜、そして温かいスープが並びました。
自然の中での食事は格別です。普段は好き嫌いの多い息子も、外で食べる料理は「おいしい!」と言って完食してくれます。食事の間、家族でキャンプの思い出話に花が咲きます。去年の夏に見た流れ星のこと、初めてのキャンプで驚いた虫の多さ、雨が降ってきて大慌てで片付けたことなど、笑いの絶えない会話が続きます。
午後は近くの小川で水遊びを楽しみました。子どもたちは小さな魚を追いかけたり、きれいな石を集めたりして夢中になっています。夫は子どもたちと一緒に川の浅瀬で遊び、私はその様子を写真に収めながら、この瞬間を心に刻んでいきます。
夕方になると、今度は夕食の準備です。メニューは簡単な焼きそばと、フォイル包みの魚介類。子どもたちにも包丁を使わない作業を手伝ってもらいながら、家族で協力して料理を作っていきます。
日が沈み始め、辺りが暗くなってくると、いよいよキャンプの醍醐味であるキャンプファイヤーの時間です。火を囲みながらマシュマロを焼き、温かい飲み物を飲んで、星空を見上げます。街灯のない場所だからこそ見える満天の星空に、子どもたちは「すごーい!」と感動の声を上げます。
この日の夜は、テントの中で家族4人が寄り添って眠りました。普段は別々の部屋で寝ている私たちですが、キャンプではこうして一つの空間で過ごします。子どもたちの寝息を聞きながら、私は今日一日の出来事を振り返ります。
キャンプでの料理は確かに手間がかかります。でも、その分だけ家族との時間を共有できる特別な機会になっています。包丁を使う、火を扱う、食材を洗うなど、それぞれができることを分担しながら、一つの食事を作り上げていく。その過程で、子どもたちは自然と協力することの大切さを学んでいるように感じます。
翌朝、朝日とともに目覚めると、テントの外からは小鳥のさえずりが聞こえてきました。朝食は簡単なホットサンドとスープ。朝もやの中での食事も、また格別な味わいです。片付けを終えて帰路につく頃には、子どもたちは既に「次はいつキャンプに来れるの?」と聞いてきます。
キャンプは、私たち家族にとって大切な思い出を作る場所になっています。自然の中で過ごす時間は、日常では得られない特別な経験を与えてくれます。料理を通じて協力することの楽しさを知り、星空の下で語り合う時間は、家族の絆をより一層深めてくれます。
テントを畳み、キャンプ場を後にする時、私は既に次回のキャンプの計画を考え始めていました。季節が変われば、また違った自然の表情が見られるはず。そして、その度に新しい家族の思い出が増えていくことでしょう。帰り道、車の中で眠ってしまった子どもたちの穏やかな寝顔を見ながら、このかけがえのない時間を大切にしていきたいと強く感じました。
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