
金曜の夜、久しぶりに集まった友人たちと韓国料理屋の扉を開けた瞬間、唐辛子とニンニクの香りが鼻をついた。
「辛いの苦手なんだよね」って言いながら、結局一番辛いメニューを頼むやつが必ずいる。今回はタカシだった。彼はいつもそうで、去年の忘年会でも激辛鍋を注文して、最後は牛乳を3杯飲んでた。学習能力ってものがないのか、それとも辛さに挑む自分が好きなのか。まあどっちでもいいんだけど。
テーブルに並んだチヂミ、キムチ、そしてメインのスンドゥブチゲ。赤い。とにかく赤い。鍋の表面が唐辛子の油で真っ赤に染まっていて、湯気が立ち上るたびにピリッとした刺激が目に染みる。誰かが「これヤバくない?」って言った瞬間、もう一人が「大丈夫でしょ」ってレンゲですくって口に運んだ。
5秒後、その「大丈夫でしょ」は完全に撤回された。
水を一気飲みする友人を横目に、私は少しずつスープをすすった。確かに辛い。でもこの辛さって不思議なもので、痛いんだけど止められない。舌がヒリヒリして、額に汗が滲んでくるのに、なぜかまた次の一口に手が伸びる。中毒性があるというか、辛さの向こう側に旨味があるのが分かるから、つい追いかけてしまう。豆腐が柔らかくて、卵を崩すとまろやかさが加わって、ちょうどいいバランスになる。
「これさ、明日絶対お腹壊すやつじゃん」
誰かがそう言ったけど、誰も箸を止めなかった。チヂミはカリッとした食感で、端っこの焦げた部分が特に美味しい。タレにつけると、酸味と甘みが辛さを中和してくれて、一瞬だけ口の中が休まる。でもすぐにまたスンドゥブに戻ってしまうんだよね。
そういえば、大学時代によく行ってた「ハンナム食堂」って店があったな。あそこのおばちゃん、めちゃくちゃ愛想悪かったけど料理は絶品だった。注文すると無言でキムチとナムルを並べて、「辛いよ」の一言だけ残して厨房に戻っていく。でもその「辛いよ」は警告じゃなくて、むしろ自信の表れだったんだと今なら分かる。閉店しちゃったって聞いたけど、本当かな。
話は戻るけど、友達とワイワイ食べる韓国料理って、なんでこんなに盛り上がるんだろう。たぶん辛さのせいだと思う。辛いものを食べてる時って、みんな素直になる。「うわっ」とか「やばっ」とか、普段は言わないような声が自然に出る。顔を真っ赤にして、鼻水すすりながら、それでも笑ってる。格好つけられないんだよね、辛さの前では。
タカシは案の定、途中でギブアップしてた。「もう無理」って言いながらも、サムギョプサルは普通に食べてる。都合のいい胃袋してるなと思いつつ、私も追加でチーズトッポギを注文した。
店内は他のテーブルも賑やかで、笑い声があちこちから聞こえてくる。隣のグループは誕生日祝いをしてるみたいで、店員さんが拍手しながらケーキを運んでいった。金曜の夜、週末の始まり、仕事から解放された人たちの安堵感が店全体に充満してる。窓の外は11月の冷たい空気だけど、店内は熱気でむせ返りそうなくらい暖かい。
「次はどこ行く?」って誰かが聞いた。
「カラオケ?」「いや、バーがいい」「二次会いる?」
結論は出ないまま、私たちはまた辛いスープをすすった。辛さで涙目になりながら、でも笑ってる。こういう時間が好きなんだと思う。特別なことは何もない、ただ集まって、辛いものを食べて、くだらない話をして。
帰り道、口の中はまだヒリヒリしてた。明日の朝、きっと後悔するんだろうな…って思いながらも、次はいつ集まろうかって考えてる自分がいる。

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