ワインに合う料理を並べたら、パーティーが妙な方向に転がった話

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ワイングラスを並べながら、私は何を血迷ったのか「今夜はスパニッシュで攻めよう」と決めてしまった。

きっかけは先月、会社の先輩に連れて行かれた渋谷のバル「カサ・ロハ」で食べたパタタス・ブラバスだった。あのクリーミーなアリオリソースと、外はカリッと中はホクホクのじゃがいもの組み合わせが忘れられなくて。で、週末に友人を呼んでワインパーティーをやることになったとき、スペイン料理を作ろうと思い立ったわけ。ただ、料理経験値がそこまで高くない私が、いきなりスパニッシュに挑戦するのは無謀だったかもしれない…っていうのは、後から気づいた。

準備を始めたのは金曜の夜。仕事終わりにスーパーへ駆け込んで、生ハム、マンチェゴチーズ、パプリカ、にんにく、オリーブオイルを買い込んだ。レジ袋を提げて帰る道すがら、街灯の下で冷たい空気を吸い込むと、なんだかワクワクしてくる。明日の夜、テーブルにずらりと並ぶタパスの数々を想像しながら歩いていたら、信号を一回見逃した。

当日の昼過ぎから本格的に調理開始。まずはアヒージョ。小さな土鍋ににんにくとオリーブオイルをたっぷり入れて、エビとマッシュルームを投入する。弱火でじっくり火を通していくと、キッチン全体ににんにくの香りが立ち込めて、これだけでもう成功した気分になる。次にトルティージャ。スペイン風オムレツってやつ。じゃがいもと玉ねぎを炒めて、卵液と混ぜてフライパンで焼く…はずだったんだけど、ひっくり返すときに盛大に失敗して、半分くらいコンロの上に落ちた。慌てて拾い集めて、なんとか形にしたけど、見た目は正直微妙。でもまあ、味は悪くないはず。

そういえば大学時代、友達の家で鍋パーティーをやったとき、誰かが持ってきた謎の調味料を入れたら全員お腹壊したことがあったな。あれ以来、私は自分で味見できないものは出さないって決めてる。関係ないけど。

生ハムとチーズは切って盛り付けるだけだから楽勝。オリーブも瓶から出して小皿に移すだけ。パプリカのマリネは前日に仕込んでおいたから、冷蔵庫から出してくるだけでOK。ガスパチョも作ろうと思ったけど、時間がなくて断念した。まあ、冬だしスープは温かいのがいいよね、と自分を納得させる。

夕方6時、友人たちが次々とやってくる。玄関を開けると「うわ、めっちゃいい匂い!」って声が聞こえて、ちょっと嬉しくなる。テーブルには大小さまざまな皿が並んで、赤ワイン、白ワイン、スパークリングワインが冷えている。照明を少し落として、キャンドルを灯したら、なんだか雰囲気出てきた。

最初の一杯はカヴァで乾杯。スペインのスパークリングワインって、シャンパンより気軽に飲めるのがいいんだよね。泡が弾ける音と、グラスが触れ合う音が重なって、パーティーの始まりを告げる。みんな思い思いに料理を取り分けて、口に運んでいく。アヒージョのオイルにバゲットを浸して食べる瞬間、ああこれこれ、って思う。生ハムの塩気とマンチェゴチーズのコクが、赤ワインの渋みと絶妙にマッチして、会話が弾む。

ひとり、普段あまりワインを飲まないという友人が「これ、めっちゃ飲みやすい」と言いながら、すでに2杯目に突入していた。大丈夫かな、とちょっと心配になったけど、本人は楽しそうだからまあいいか。料理の話、仕事の愚痴、最近見たドラマの話、そんな他愛もない会話がテーブルを囲んで飛び交う。トルティージャの見た目について突っ込まれたけど、「これが家庭の味ってやつだから」と適当に誤魔化した。みんな笑って、そのまま完食してくれたから良しとしよう。

気づけば夜も更けて、テーブルの上にはワインボトルが何本も転がっていた。

料理とワインの組み合わせって、結局のところ正解なんてないのかもしれない。教科書的には「白身魚には白ワイン」とか「肉料理には赤ワイン」とか言うけれど、その日の気分とか、一緒に飲む相手とか、そういう目に見えない要素の方がずっと大事な気がする。今夜のパーティーだって、完璧なスパニッシュ料理が並んでいたわけじゃないし、ワインのセレクトもそこまで考え抜いたわけじゃない。ただ、笑いながら食べて飲んで、それだけで十分だった。

帰り際、友人のひとりが「次はイタリアンでやろうよ」と言った。私は苦笑いしながら「考えとく」とだけ答えた。キッチンに残された洗い物の山を見ながら、次はもうちょっと簡単な料理にしようと心に誓ったけど、たぶんまた同じことを繰り返すんだろうな。

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