
スパニッシュ料理とワインのパーティーを企画したのは、去年の11月だった。
友人が「最近ワインにハマってて」と言い出したのがきっかけで、じゃあうちでやろうかという流れになったんだけど、正直私はワインのことなんてほとんど知らない。赤と白の違いくらいは分かるけど、どの料理に何を合わせるとか、そういう知識はゼロに等しかった。でもまあ、なんとかなるだろうと思って引き受けてしまったのが運の尽き。準備を始めてから気づいたんだけど、ワインパーティーって意外と奥が深い。料理との相性とか、温度管理とか、グラスの種類とか。ネットで調べれば調べるほど情報が溢れてきて、結局何を信じればいいのか分からなくなってくる。
とりあえずスパニッシュ料理をメインにしようと決めた。理由は単純で、タパスなら小皿でいろいろ出せるから楽そうだったから。生ハムとチーズ、オリーブ、パプリカのマリネ、アヒージョ、トルティーヤ。このあたりを並べておけば見栄えもするし、ワインにも合うはず…だと思った。
前日の夜、キッチンで仕込みをしているときの匂いは今でも覚えてる。ニンニクとオリーブオイルの香りが部屋中に充満して、換気扇を回してもなかなか消えなくて。翌日のパーティーまでこの匂いが残ったらどうしようと少し焦ったけど、朝起きたらちゃんと消えてた。よかった。
当日。友人たちが持ってきたワインの本数を見て、ちょっと引いた。
一人2本とか、明らかに飲みすぎでしょ。でも集まったメンバーを見たら納得した。いつもより人数が多かったし、中には「ワイン好き」を通り越して「ワインマニア」みたいな人もいて、持参したボトルについて熱く語り始める。「これはリオハの…」とか「このテンプラニーリョは…」とか言われても、正直ついていけない。私はただ頷いて、グラスに注いでもらうだけ。
料理を並べ始めたら、予想外のことが起きた。みんな料理よりワインの話に夢中で、せっかく作ったアヒージョがなかなか減らない。いや、食べてはいるんだけど、メインはあくまでワインなんだなって。ちょっと寂しい気持ちになったけど、まあそういうパーティーだから仕方ない。
そういえば、大学時代に友達の家でやった鍋パーティーを思い出した。あのときも似たようなことがあって、みんなゲームに夢中で鍋が放置されて、最後に残った白菜とかを私が黙々と食べた記憶がある。なんか今回もそんな感じ…だけど。
途中から、ワインと料理の組み合わせを試す実験みたいになってきた。誰かが「このチーズにはこっちの白ワインの方が合う」とか言い出して、みんなで試飲会みたいに。それはそれで楽しかったけど、私が用意した料理の意図とはだいぶ違う展開になってた。トルティーヤなんて、冷めてから食べられてたし。温かいうちに食べてほしかったんだけどな。
夜が更けてくると、空いたボトルがテーブルの端に並び始める。ラベルを眺めながら、これだけ飲んだのかとちょっと驚く。でも不思議と誰も酔いつぶれてない。ちゃんと料理を食べてたからかもしれない。結局、私が心配してた「料理が余る」問題は杞憂で、気づいたらほとんど完食されてた。
片付けをしながら考えたのは、ワインパーティーって料理がメインじゃないんだなってこと。料理はあくまで脇役で、主役はワインとそれを囲む会話なんだと思う。だから完璧な料理を作ろうと頑張りすぎなくてもよかったのかもしれない。もっと気楽に、簡単なものを並べるだけでよかった。
次にやるとしたら、もっと手抜きしようと思う。生ハムとチーズだけでもいいかもしれない。


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