
スパニッシュ料理のケータリングを頼んだのは、たぶん去年の11月だったと思う。
友人が「ワイン飲む会やろうよ」って言い出して、じゃあ料理どうする?ってなったとき、私が真っ先に思いついたのがスペイン料理だった。理由?なんとなくワインのイメージに合うかなって。実際ピンチョスとかタパスとか、つまみやすいし見た目も華やかだし、パーティー向きじゃん。で、近所にあるケータリング専門の店「カサ・デル・ソル」に電話して、10人分くらい頼んだんだよね。当日の夕方6時に届けてもらう約束で。
ところがこれが、思った以上に量が多かった。段ボール三箱。玄関で受け取ったとき「え、こんなに?」って声が出た。トルティーヤ、パタタス・ブラバス、ガーリックシュリンプ、イベリコ豚の何か、チーズの盛り合わせ、それから名前も覚えてないような小皿料理が次から次へと出てくる。冷蔵庫に入りきらなくて、ベランダに仮置きしたくらい。11月の夜風が冷たくて、ちょうどよかったけど。
ワインはみんなが持ち寄りだった。赤が中心で、スペインのテンプラニーロとか、チリのカベルネとか、あとイタリアの何か。私はワインにそこまで詳しくないから、ラベルがおしゃれなやつを選んだ。味の違いなんて正直よくわからないし…だけど。
パーティーが始まってしばらくすると、料理の取り合いみたいになった。特にガーリックシュリンプが人気で、あっという間になくなる。オリーブオイルとニンニクの香りが部屋中に充満して、それだけでもう気分が上がる感じ。誰かが「これめっちゃワインに合うじゃん」って言って、グラスを傾ける。本当にそうなのか、それとも雰囲気でそう感じるだけなのか、未だに謎だけど。
途中で一人の友達が「このチーズ、前に北海道で食べたやつに似てる」って言い出して、そこから北海道旅行の話になった。私も3年前に行ったことがあって、富良野のラベンダー畑がどうとか、小樽の運河が思ったより狭かったとか、そういう話。ワインパーティーなのに、なぜか北海道。でもそういう脱線が楽しかったりする。
料理が減ってくると、今度はワインの話になった。誰かが「このワイン、ベリー系の香りがする」とか「タンニンが強め」とか言ってて、私は横で「へー」って相槌を打つだけ。正直、そういう表現ってよくわからない。ベリーって言われても、どのベリー?って思うし。でも知ったかぶりするのも嫌だから、黙って飲んでた。
夜が更けてくると、みんな少しずつ酔いが回ってきて、会話のテンポが変わってくる。笑い声が大きくなって、話が飛び飛びになって、誰が何を言ってるのかわからなくなる瞬間もある。でもそれが心地いい。照明を少し落として、キャンドルを灯したら、なんとなくバルにいるような気分になった。スペインに行ったことないけど。
残った料理は翌日の朝ごはんになった。冷めたトルティーヤを温め直して、コーヒーと一緒に食べる。昨日の賑やかさが嘘みたいに静かな朝。ベランダに出したチーズの盛り合わせは、寒さのおかげで無事だった。
結局、ワインに合う料理って何なのか、正解はわからないままだ。スパニッシュ料理が良かったのか、それとも何でもよかったのか。ただ、あの夜は楽しかった。それだけは確かで、それ以上のことは、たぶん考えなくていい気がしてる。


コメント