スパニッシュ料理とワインのパーティーで学んだ、完璧じゃない方がうまくいく法則

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ワイングラスを並べながら、私は何度目かのため息をついていた。

友人が「スパニッシュ料理のパーティーやろうよ」って言い出したのは、確か三週間前の金曜の夜だった。その時は軽いノリで「いいね!」なんて返事したんだけど、いざ準備を始めてみると、これがなかなかどうして大変で。レシピ本を三冊買い込んで、ワインショップで店員さんに三十分も相談して、食材を探しに三軒もスーパーをはしごした。完璧なパーティーにしたかったんだよね、当時の私は。

タパスの盛り合わせを作ろうとして、最初に失敗したのはトルティージャだった。じゃがいもとたまごで作るシンプルな料理のはずが、ひっくり返すタイミングを完全に見誤って、フライパンの中でぐちゃぐちゃに。キッチンの床にも飛び散って、猫が興味津々で近づいてくるし。もう笑うしかなかった。

でもね、不思議なことに気づいたんだ。

完璧を目指すのをやめた瞬間から、準備が楽しくなってきた。生ハムは高級なイベリコ豚じゃなくて、近所のスーパーで買える普通のやつ。オリーブも瓶詰めの安いの。アヒージョ用のエビは冷凍もので十分だし、パプリカのマリネは前日に作り置きしておけば味が染みて逆に美味しい。ガーリックの香りが部屋中に広がって、それだけでもうパーティー気分になれる。

そういえば大学時代、スペイン語の授業を取っていたことを思い出した。真面目に勉強してたわけじゃないんだけど、先生がバルセロナ出身の人で、よく現地の食文化の話をしてくれて。「スペイン人は料理に時間をかけない。でも食事の時間はすごく長いのよ」って言ってた。当時は「へー」くらいにしか思ってなかったけど、今ならその意味がわかる気がする。

ワインは悩んだ末に、リオハの赤とアルバリーニョの白を選んだ。ワインショップ「カーヴ・ド・ラルジュ」の店員さんが「スパニッシュ料理なら絶対これ」って勧めてくれたやつ。正直、味の違いなんて私にはよくわからないんだけど、ラベルがおしゃれだったから即決。見た目って大事だよね、パーティーでは特に。

当日の夕方、友人たちが集まり始めた頃には、もう開き直ってた。テーブルには失敗作のトルティージャも堂々と並べて、「これ、アート作品だから」なんて言い訳しながら。チョリソーのグリルは焦げ目がつきすぎて真っ黒だし、パエリアは底がちょっとおこげになりすぎたし。

でも誰も気にしてなかった。むしろ「この焦げ目が最高じゃん」とか「おこげの取り合いになるやつだ」とか言いながら、みんな笑ってる。ワインのボトルはあっという間に空いて、二本目、三本目と開けていく。グラスを傾けながら、どうでもいい話で盛り上がって、気づいたら窓の外はもう真っ暗だった。

料理が完璧じゃなくても、ワインの選び方が正しくなくても、パーティーは成立する。むしろ、ちょっとした失敗があった方が話のネタになって、場が和むんだよね。トルティージャの失敗談なんて、その後何度もみんなにいじられたし。

結局、あのパーティーで一番評判が良かったのは、急遽追加で作ったガーリックトーストだった。バゲットにニンニクとオリーブオイルを塗って焼いただけの、超シンプルなやつ。所要時間五分。料理本には載ってないような適当なメニュー。

次にスパニッシュパーティーをやる時は、もっと肩の力を抜いてやろうと思う。レシピ本は一冊でいいし、ワインも直感で選べばいい。大事なのは完璧な料理じゃなくて、一緒に食べる時間の方だから…なんて、ちょっと良い話風にまとめようとしたけど、やめた。

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